MOTOMURA AROMA TOPICS
本村アロマの事業活動を随時更新。
2023.9 .19
全国醸造機器用品展示会2023 in 赤煉瓦酒造工場に出展します。


アロマセラピーに通じている人はネロリと聞けば、「スキンケアの優れもの」というイメージがあるのではないでしょうか?また、鎮静作用もあるのでリラックスの作用などが思い浮かぶのではないかと思います。ネロリとは、ビターオレンジ(学名:Citrus aurantium)の花から抽出した精油のことを言います。ビターオレンジとは和名でいうダイダイのこと。お正月飾りに使われるちょっと大きめのみかんの実です。
今回本村アロマ蒸留所で蒸留試験をしたのは、蒸留所がある福岡県大牟田市の橘香園で栽培されている「宮川早生」の花です。「宮川早生」は、現在日本各地で栽培されている早生みかんのルーツとなった伝統あるみかんです。初秋により良い実をつけてもらうために、花が咲く時期に、摘花と言ってつぼみを手で間引いていく作業をするそうです。その際にとられたみかんの花はそのままでもとっても爽やかな良い香りです。摘花の後、本来であれば捨てられてしまうこの花びらですが、捨ててしまうのはもったいない!ということで蒸留水にしていただきました。厳密にはネロリウォーターではないですが、同じミカン科の花から採れる蒸留水の成分は大きくは変わりません。
みかんの花の成分には、美肌になりたいと思う女性に嬉しい成分がたくさん含まれています。新しい細胞の成長を著しく促し、弾力を回復する、少し年齢を重ねてきたお肌にはぴったりな作用です。エストロゲン様作用もあるため、ホルモンバランスの変化によるイライラや不安といったときにも役立ちます。また、リラックスを促す成分と活性する成分を半分ずつぐらいの割合で含んでいるため、リラックスもさせてくれますが、ほどよく元気にもさせてくれるような作用があります。
これだけ女性にとって嬉しい作用があるネロリですが、好き嫌いが分かれる香りでもあります。私自身、ネロリの香りはあまり好きな香りではありません。私のように、ネロリの成分をスキンケアに使いたいけれども、香りがあまり好みではないという方にお勧めしたいのが、ネロリウォーターと他の数種類の精油を使ったオリジナルの化粧水です。今回、私はネロリウォーター、マカダミアナッツオイル、フランキンセンス、クラリセージ、イランイランをブレンドしてオリジナルの化粧水を作りました。フランキンセンスもクラリセージも美肌には欠かせない精油です。ネロリウォーターをベースに細胞膜の組成に近いマカダミアナッツオイルを加え、美肌に良い精油を加えることで極上な化粧水の出来上がりです!市販で売っていたとしたら、高額な化粧水になることは間違いないです。美肌を目指しながらリラックスも出来る天然植物100%の化粧水。爽やかな中に甘さもある柔らかな香りに包まれながら、スキンケアの時間がとても贅沢なひと時になります。
日本の風土にとても相性の良いミカン科の植物は日本全国にたくさんあります。これまでは捨てられて当たり前だったみかんの花や枝、果皮、それらを資源として使うことで私たちの健康や美肌に活かすことができます。食料自給率の低さやエネルギー資源が少ないといわれる我が国ですが、私たちの身の回りには見落とされている資源がたくさんあるのかもしれません。6次産業の活性化が謳われてから久しいですが、今ある資源に目を向けて産業化していくことも大切なのではないかと思います。
先日、本村アロマ蒸留所ではヒノキの鉋(かんな)くずを使って蒸留試験がありました。香りを嗅がせていただきましたが、私たちがよく知っているヒノキの香りがより優しく丸みを感じるものでした。昔から、日本国内では建築材や家具材、器具材、浴槽、桶、まな板などに使われてきたヒノキ。耐朽性や殺蟻性があることから、神社仏閣を作る際に用いられています。世界最古の木造建築物である法隆寺にもヒノキが使われています。このように、昔からこの国では生活に欠かせない木材として生息しているヒノキ、地産地消といわれるように、私たちの体にも少なからず良い影響を及ぼしているに違いありません。
浴槽や桶、まな板にヒノキを使用したことからもわかるように、ヒノキの成分はカビや細菌に対して非常に有効です。森林浴の作用と言われるモノテルペン炭化水素類やセスキテルペン炭化水素類が多く含まれるため、香りを嗅ぐことで森林にいるようなリフレッシュ効果やリラックス効果があることも有名です。特にモノテルペン炭化水素類に含まれるαピネンという成分は、森林浴効果の元となる成分であり、αピネンのリラックス作用により良質な睡眠を促すといわれています。実際にラベンダー精油よりも入眠時間が短くなり、睡眠効率も上がったという実験結果も出ています。(出典元:恒次祐子「Cosmetology」vol.26、2018年)
また、私たちの体には、生まれつきいくつもの免疫細胞が備わっていますが、そのうちの一つがNK細胞です。リンパ球の中の約10%~30%を占めており、常に私たちの体の中をパトロールしていて、細菌やウィルスなどの病原菌やがん細胞をみつけると、非常に強い殺傷能力でいち早く攻撃をはじめてくれる体の自衛隊のような存在です。そのNK細胞とヒノキ精油の関係性を実証した実験結果があります。ヒノキ精油を揮発させた室内に被験者を3日間滞在させたところ、滞在前よりもNK(ナチュラルキラー)細胞が活性化(増加)したというのです。また、その効果は滞在後1ヶ月経った後も滞在前より優位だったということも結果として出ています。(出典/ Li, Q., et al.: Int. J. Immunopathol. Pharmacol., 22, 951-959 (2009)NK(ナチュラルキラー)
ヒトの体の仕組みを考えたとき、交感神経が高ぶった状態を続けると私たちの免疫力は下がることがわかっています。つまり、副交感神経を優位にし、交感神経と副交感神経のバランスを良くしておくことが免疫力には非常に大切です。免疫力が下がると風邪やインフルエンザ、コロナウィルス感染症などの流行性の疾病になるだけではなく、アレルギーやがんの原因となります。この免疫力の大きな鍵となるのがNK細胞です。スマートフォンがある生活が当たり前になった現代、私たちは常に膨大な情報を浴びて過ごしています。ヒトは意識的に受け取っている情報は101byte/秒ですが、無意識のうちに108byte/秒の情報を受け取っているといいます。これだけ膨大な情報量を浴びていれば交感神経は必然的に高ぶります。つまり、以前にも増して免疫力が下がりやすい環境下に晒されているということです。
天然の香りの実験で、副交感神経を優位にすることで免疫力がアップしたという結果はたくさんあるのですが、ヒノキの特徴成分であるαピネンにもその効果は大いにあります。デジタル社会を生きている現代の私たちは、積極的に副交感神経を優位にすることを心がけていくことが健康維持のためには非常に大切になります。ヒノキの香りを嗅いで、副交感神経を優位にしながら、NK細胞を活性化させ免疫力をあげていく。昔から伝わる日本の資源を活用することが、ストレス社会と言われる現代人の健康維持には欠かせないと言えそうです。
今回ヒノキの鉋(カンナ)くずからのアロマ蒸留試験を行いました。ヒノキの様な樹木も産地や季節、新材や乾燥材などで、アロマオイルの採油率も香りも様々です。今回は鉋(カンナ)くずとの事もあり、建材等に使用される乾燥材が原料となります。アロマオイルは基本原料が乾燥してもアロマオイルの量が減るなどは、これまでの試験では感じたことはありません。ただ、木くずやチップと違い、今回は鉋(カンナ)くずということもあり、また原料が約2kg強と非常に少ないのもあり、アロマオイルが抽出される可能性は低いと思ってました。
アロマオイルは蒸留開始と共にガラス管へ流れ出て来るのですが、今回はそれが確認出来なかったので多少諦めムードでしたが、蒸留開始20分後辺りから徐々にアロマオイルがガラス管内に流れてきて、蒸留終了時には通常と変わらない量のアロマオイルが抽出されました。ヒノキや樹木は柑橘などに比べると、多少抽出されるまで時間はかかりますが、今回の様なケースも珍しいと思います。香りはこれまでの香りとも違い、ツーンとしたものがなく、非常にナイーブで優しい香りでした。アロマ蒸留は本当に奥が深いです。
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